2017年9月 7日 (木)

『恋人塚』清水舞子

今回紹介する品は、清水舞子女史のアルバム『恋人塚』である。
以前紹介した亜樹千尋女史の「くにたち」に続き、西田陽一氏を語る品としては重要なものである。


清水女史は、京都を拠点として活動していた。
今で言えばローカルアイドルということになるだろう。
小生のオリコン通信関係で関西在住の知人には、清水女史のイベントに参加したことがあるという者もいるので、活動していたことは事実ではあろうが、小生自身は、清水女史を生で見たことはない。


当時も、地方で活動していたアイドルはいたが、
小出弘美女史や酒井美紀女史のように、レコードデビューするにあたっては、東京に進出することが普通であった。

地方に腰を据えて活動するとなると、レコードを発売するにしても、インディーズや大手レコード会社の自主製作扱いでレコードを製作するというところが妥当な線になる。
それでも、アナログレコードは原盤をカッティングしてプレスする時代である、イニシャルでも500から1,000にはなるだろう。

当時は、情報発信にかかるイニシャルコストが現在よりも高かったわけであり、当然、レコードとして曲を発表できた者の数も多くはなかった。


その中で、アルバムまで出した清水女史は希有な例であり、これは"西田陽一マジック"とも言えるものだろう。
(西田陽一マジックは、この後碁も発動されることとなる。)


さて、このアルバム、全曲が、マジックを発動した西田陽一氏の作詞によるものであり、めくるめく西田陽一ワールドが展開されている。


a1「恋人塚」
作詞:西田陽一
作曲:三木たかし
編曲:三木たかし
小生には、大覚寺まで行き"恋人塚"を探したものの、みつけられなかったという経験がある。
恋人塚は、西田陽一ワールドの中にのみ存在するのであろう。


a2「私の京都」
作詞:西田陽一
作曲:青木望
編曲:青木望
西田陽一氏がこよなく愛する(と思われる)の京都情景がちりばめられており、この曲でも「恋人塚」が舞台の一場面となってる。


a3「貴方とよく似た人へ」
作詞:西田陽一
作曲:三木たかし
編曲:三木たかし
別れた人とよく似た人を見て、過去の浄化された思い出が甦るといった、これはよくある風景。
この曲の主人公は歌手らしい。
西田陽一ワールドらしさは薄いかもしれない。


a4「お姉さんの子供」
作詞:西田陽一
作曲:三木たかし
編曲:三木たかし
お姉さんの子供を見ながら、自分の彼氏との子供のことを想像しているうちに、妙な結論に至ってしまうのであるが、どんな結論かは、聴いていただければと思う。


a5「十年後の私」
作詞:西田陽一
作曲:三木たかし
編曲:三木たかし
今までの曲の流れとは一変したポップな曲調。
歌詞に出てくる"流行歌"を意識したものであるうか。
間奏の効果音が少々妙ではある。
ヴォーカルは、がんばって歌っています、といった感じ。


a6「メモリアル」
作詞:西田陽一
作曲:三木たかし
編曲:三木たかし
高木麻早作曲。小生にとっての高木麻早は「想い出が多すぎて」につきるのであるが、
デビュー曲A面の「蒼い日記」より、こちらの曲のほうが高木麻早らしい感じ。
8分の12拍子に七五調の歌詞を合わせ、軽やかでありながら落ち着いた風合いの良い曲。


b1「蒼い日記」
作詞:西田陽一
作曲:高木麻早
編曲:梅垣達志
清水舞子のデビュー曲。こちらも高木麻早作曲。
「メモリアル」と同様、アレンジは梅垣達志氏。
歌詞で歌われるとおり"ワルツ"となっている。
曲調は暗め。
ただし、デビュー曲だけあってか、オケは清水舞子の作品の中ではゴージャスといったところ。
コーラスが入るのも、デビュー盤「蒼い日記」と「メモリアル」のみである。


b2「くにたち」
作詞:西田陽一
作曲:亜樹千尋
編曲:青木望
亜樹千尋「くにたち」BON-1017のカヴァー曲。
西田陽一氏の最初期の作品だと思われる。
七五調の歌詞が、レトロな感じを漂わせている。
西田氏は国立で暮らしたことが、きっとあったのであろう。
国立駅の駅舎もなくなった今、すべては思い出の中の世界になってしまったのだが。


b3「吉祥寺ストリート」
作詞:西田陽一
作曲:青木望
編曲:青木望
くにたちから新宿に向かうあいだに途中下車した、お洒落なメインストリートがある街、と歌われている。
吉祥寺のメインストリートとはどこであろうか。1983年頃の吉祥寺サンロードであれば、小生にとっては、あの、たとえば中野サンモールと比べてみても幅の広い通りから、ちょっと郊外の街、といった印象を持っていたのであるが、それが、"お洒落だった"といわれれば、そうだったのかもしれない。


b4「ふたりだけのミニシアター」
作詞:西田陽一
作曲:三木たかし
編曲:青木望
ヴォーカルがダブルトラックとなっている。この曲を、敢えてか細い声で歌い、その声をダブルトラックで録音したことにより、"ふたりだけ"の静謐感が演出されている。
薄明かりの部屋でまぶたを閉じて聴けば、情景が浮かんでくるようである。


b5「ごめんねピピちゃん」
作詞:西田陽一
作曲:青木望
編曲:青木望
コミカルな印象のイントロではあるが、歌詞の内容は、リスを買った、彼氏と別れた、リスが死んだ、という、一人語りの日記のような内容である。
この曲を聴くたびに、佐野量子女史がマリモを買って、綾小路コロマロ・綾小路コロチャン、と名付けて飼って?いたというエピソードを思い出してしまう小生なのであった。


b6「貴方への愛」
作詞:西田陽一
作曲:三木たかし
編曲:青木望
12曲入りのアルバムの掉尾を飾る曲。
歌い上げるバラードにもなり得る曲ではあるのだが、それでは、清水女史の持ち味が発揮されない。
たどたどしくも誠実に、貴方への愛を唱える清水女史なのであった。


清水舞子
恋人塚
ニューユース レコード
NY28-5001
発売日不明

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年7月 5日 (火)

『夢からさめない』

r32h-1043

OVA『夢から、さめない。』に先立って発売されたのが、このアルバム。

アニメのタイトルは『夢から、さめない。』、このアルバムのタイトルは『夢からさめない』、さらに、一昨年発売されてDVDでは『夢から、さめない』とアナウンスされていたりします。そういった形式的なところにこだわらないところも白倉女史らしいところなのでしょう。

アニメの中で主人公川原砂緒の声を当てているのが、本アルバムの名義人佐野量子女史。
なおアニメ中の相方藤井貴生の声を当てているのは佐々木望氏。この後『幽☆遊☆白書』の主人公の声を当てるなどし、現在では佐々木氏のほうが有名でしょうか?。

1曲目、「夢からさめない」は、曲だけ聴いていると炭酸の抜けたサイダーのような感覚。アニメのエンディングで流れだすときにはとても良く聞こえるのですが。
2曲目「オープニングシーン」はその名のとおりオープニング・シーンに使われた曲。やはりアニメの映像を観たことがある人が聴いてこその曲でしょう。7曲目の「藤井君のおどろき」然り。

3曲目の「透明なスケッチ」、5曲目「八月のReason」、8曲目「恋が止まらない」は、歌詞がついているので普通に聴くことができます。が、映像が流れていたらなお良いと思われます。
動きが無い心の中にほんの少しゆれだす場所があり、その動く範囲が広くなっていく、そんな感覚の曲たちです。

4曲目「小雪のテーマ」はアニメ内の登場人物“天瀬小雪”のテーマという意味でしょうか。そして9曲目「片思いの人魚-小雪のテーマ-」はこの曲に白倉女史の詞をつけたものです。
天瀬小雪は、登場人物としての掘り下げが不足していた感がありアニメ内ではこの曲も目立ちませんでしたが、曲は洋上のゆったりしたうねりの中に身をまかせている感が歌詞とも調和してなかなかの出来です。
当時、NHKでお知らせ画面のB.G.M.として使われていたのを何度か聞いたことがあります。
また、この曲の歌詞一部変えた「片思いの人魚-珊瑚のテーマ-」が、白倉女史プロデュースのリーディングストーリーの中で後に世に出ています。それだけ白倉女史の中で思い入れがある曲だったのでしょう。

6曲目「不安な都市」と10曲目「告白する砂緒」は、アニメ中ではB.G.M.として使われているものですが、このアルバムではナレーション入りです。ナレーションの台詞は白倉女史が自ら書いているので、曲がそれぞれアニメの要約版的意味合いを持つこととなっております。

そして11曲目「50%Dream」。アニメ中では使われていない曲。気だるさと不安感にさいなまれた沈鬱系の歌唱を、強めのビートを前面に出したオケで中和しています。アルバムのコンセプト的には最も良くできていると思えます。

12曲目「夢からさめない(Inssturumental)」アニメのB.G.M.用に別アレンジで作られたテーマ曲です。

そして13曲目は「瞳にピアス」。アニメとは全く関係なく、おまけ的に収められた曲です。そのため、曲自体は良いのですが、アルバムの中では浮いているといった感は否めません。裏返していえば、それだけの存在感があるということであり、この曲以外の曲はコンセプトが統一された仕上がりになっていたということでしょう。

『夢からさめない』佐野量子
R32H-1043
1986年12月21日発売(LPレコードは12月15日発売)

| | コメント (0) | トラックバック (0)